淫乱
僕が小学生の頃、クラスの中に一人みんなからいじめられている女の子がいた。
普通いじめられる子というのは、男の子でも女の子でも運動がまるっきりダメだったり、何度やっても算数の九九が覚えられなかったり、そういう、人よりも劣った子が標的になるものだろう。
でも、その子は違った。
その子は逆に、子供にしては異様なくらい美しかったのだ。
劣った子もいじめの対象になるけど、逆に人よりも並外れて美しかったりすると(その子かわいいというのではなくて、性的な魅力を秘めた美しいと言うような子だった)、同じように人からいじめに合うものだということを僕は知った。
大人は、その子の異様な美しさに驚きながらも、その子にのことを差別的に「痴女」と言っていた。
実際に、その子が何か淫らなことをしたとかそんな事は全くなくて、でもそのあまりにも子供離れした美しい顔立ちや、服の上からも想像できる豊かな胸、きれいな腰のくびれなどに、ロリータ的な魅力を感じてしまったのだろう。
大人たちはそういう自分のみだらな欲望みたいなものを無意識のうちの隠そうとして、その子の美しさを憎み、「痴女」扱いしたのだと思う。
僕は、その子の美しさに惹かれたこともあるけれど、それ以上に大人達のそういうずるい心が大嫌いだった。
だから大人が「あの痴女とは付き合うな」言いっても、いつもその女の子と遊んでいた。
その子は、自分が大人から避けられていることをよく知っていたので、「私なんかと遊んでいいの?」といつも笑顔で僕にに聴いていた。
自分が理不尽に大人から差別してされていることを知っている、そんな大人の眼だった。
「別にカンケーないよそんなの」
僕はいつでもそう答えていた。
そんな僕たちの関係は、彼女がお父さんの仕事の都合で遠くに引っ越してしまうことで終わってしまった。
今彼女がどうしているのか全く知らない。
でも、いつかどこかで会いたいなって時々そんなふうに彼女のことを思い出している。
僕にとって忘れられない思い出だ。